私自身、ＢＡＲ巡りを長いことやってきており、ＢＡＲにはかなり詳しいつもりでいた。
そんな鼻っ柱をへし折られると言うか、久しぶりに良い体験をしたので、紹介する。

　銀座の『バーよ志だ』に行ったときのこと。
この店にはいるのは初めてである。
入ったのが８時頃。店内には既に５名の客がいた。
私は、初めてであることを告げ、カウンターに座った。
(カウンターは６人も座ればいっぱいになる位、決して大きくはない)
カウンターの片隅には、本が２冊積んである。どちらもこの店のことがかかれてある本だ。
ここで生来の好奇心の強さが出てしまい、マティーニを注文しながら、
「この本読んできて、マティーニを注文する人ってあまりいないでしょ？」とバーテンダーに聞く。
バーテンダー(吉田さん、日本を代表するヴェテラン・バーテンダーの一人と言っても過言では無いと思う。)、
「まぁ、いませんねぇ」と少々ぶっきらぼう(に聞こえた)な返事。
この時点で気づくべきであった。　　
教訓その１・・・初めての店でなれなれしい口調で話しかけるのは良くない。
マティーニができるまでの間、一つおいて隣にいた客の野球の話に首をつっこんだりしていると、
（これも良くない）
教訓その２・・・ＢＡＲではむやみに他の客と話をしない。
ついに、吉田さんから一言。
「始めてきたのなら、先ず店の雰囲気をつかまないと。」
正に、その通り。「すみません」と謝る。
教訓その３・・・店に入ったら、先ず全体の雰囲気を感じ取ろう。
自分を全面に出さず、店にとけ込むことを第１に考える。

　４０過ぎの客(おそらく私に限らずマナーの良くない客)に対し、きちんと注意をされる吉田さんには感謝。
さすが、一流のバーテンダーであると敬服した次第。
また出されたマティーニの美味しかったこと。

今度襟を正して、伺おうと思う。

追記(２００３．１．７)
　その後『バーよ志だ』へは１度飲みに行き、あらためて美味しいマティーニを飲ませていただいた。
その時「以前こちらへ来たとき吉田さんに注意されましてねぇ。」と上記の話をしたら、
「そうでしたかねぇ。」と軽くいなされてしまった。(私もまだまだ修行がたらんようで。)
もう一度行こうと思っていたら、２００２年初夏、入っていたビル建て替えのため閉店となった。
またいつかどこかで、吉田さんの作る「マティーニ」を飲みたいと思うのだが・・・。

追記(２００５．１２．２１)
現在吉田さんは、『Ｋ＆Ｍ　Ｂａｒ　キスリング』で月・水・金の３日間、カウンターに立っています。
大ぶりのグラスで供されるマティーニをはじめとして、牛乳を使った会館フィズ、日本酒ベースの黒水仙等相も変わらず見事なカクテルを作り続けて下さっています。